創業6年のデジタルバンク「Varo」は9月8日、ヘッジファンドのLone Pine Capitalが主導したシリーズEラウンドで、5億1000万ドル(約560億円)を調達したと発表した。同社の評価額は、前回のラウンドの7億ドルの約3倍の25億ドルに達し、累計調達額は9億9200万ドルに達した。
サンフランシスコを拠点とするデジタル銀行のVaroは、月々の手数料が無料の口座を提供し、給料を2日前に受け取るサービスやキャッシングにも対応している。同社の特徴のひとつは、顧客基盤が米国の南東部に集中し、他の多くのネオバンクよりも人種の多様性に富んでいることだ。Varoは顧客の3分の1がアフリカ系アメリカ人、3分の1がラテン系アメリカ人であると推定している。
Varoのもう一つの大きな特徴は、銀行免許だ。他のほぼすべてのフィンテック企業がFDIC(連邦預金保険機構)に加盟する銀行との提携で、当座預金口座を提供する中で、Varoは3年の歳月と約1億ドルの費用をかけて昨年、独自の銀行免許を取得した。
創業者でCEOのコリン・ウォルシュ(52)は、ウェルズ・ファーゴやアメリカン・エキスプレスで役員を務めた後に同社を設立した。ウォルシュは、Varoが銀行免許を取得したことで、収益性が向上し、他のネオバンクに比べてコストを50%削減できたと述べている。その理由のひとつは、デビットカードや銀行間送金の手数料を、外部の銀行に支払う必要がないからだ。
ただし、Varoはまだ100ドルのキャッシングと担保付きのクレジットカード以外の主要な融資商品をリリースしていない。
ウォルシュは、同社が銀行免許を取得したことで、顧客の信頼を得ることができると考えている。「私たちの目標は、信頼のおける独立した銀行として、全米に認知度を拡大することだ」とウォルシュは話す。
しかし、今のところVaroの口座あたりの評価額は銀行免許を持たない競合のChimeやCurrentの口座の価値を下回っている。Varoは400万件の口座を抱えており、今回の調達にあたっての25億ドルの評価額は、1口座が約625ドルと評価されたことになる。
これに対し、ニューヨークのデジタルバンクCurrentは、約300万人の会員を抱えていた4月に22億ドルの評価を受けており、会員1人当たりの価値は約730ドルだ。
一方で、最近250億ドルの評価を受けたChimeの顧客数は推定1300万人で、顧客1人あたりの価値は1900ドルということになる。投資家はChimeとCurrentに、Varoよりも早い成長や顧客1人当たりの収益の増加を期待している。
■ 今年は年商1億ドル突破、IPOも視野に
ウォルシュは、「フィンテック企業の中でも、Varoは収益源の多様性、コストベースの低さ、キャッシュを生み出す能力の高さから、最も明確な収益の道筋を持っている」と語る。彼によると、Varoは今年、年商1億ドルを突破し、2023年半ばには黒字化を達成する見込みだという。同社は今後2、3年のうちの株式公開を「真剣に検討している」という。
新たに調達した5億1000万ドルの資金を、ウォルシュはマーケティングとテクノロジーの増強に投資する予定だ。「この分野のリーダーになるために、高度に差別化されたブランドを構築していきたい」と、ウォルシュは語った。
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